認知症を持つ人に会いたい

2 心が折れる

小野寺朗さん

郵便局で仕事を続けている小野寺さん。腕に巻きつけてあるのは、書いたり消したりできるメモ帳

今でも鬱はあるんですね。というのは、やっぱり思いっきり心が折れるじゃないですか。

この間、認知症に関する講演会である医師が「家族は、認知症をもつ本人に対して “できる”  “もっとできる”という思いをもって介護していることがある」という話をされていましたが、それを聞いていて、「あ、自分にもそれはあるな」と。「自分はさらにそれよりももっとひどいことを(自分に)言っているな」ということに気づいたんです。

家族よりももっと自分自身のことがわかるから、「ここまでできるはず」「これまでできる」と思っている。だけど、それができないから、思いっきり心が折れるんですね。

「できたはずなのに」というもどかしさが、自分の中にはあります。

だから、すごい鬱を今でももっています。

最近は講演会でお話しすることがあるのですが、そこでは自分のポジティブな面を出しています。でも、180度違う面が自分の中にはあるんです。心が折れてる自分と、ポジティブな自分があって、今はその二つでバランスをとっているような感じです。

職場で声をかけてくれる存在も自分にとってはとても大きいです。

仕事でいろんなことをやらせてもらって、まわりの人が「よくできたね」「うまくできたよ」「思った以上にできたよ」と声をかけてくださるのが、自分の力になる。「あ、認めてくれたんだ」と。

今までできていたことを、誰よりも自分がわかっているじゃないですか。だからこそ「ここまでできた」「ここまでできるはずだ」という思いがある。でも、今は「忘れちゃった」「できない」「間違えた」っていう毎日だから、「これでいいのかな」っていう感じで……「前の自分だったらもっとできるんだけど、今はここまでしかできません」という思いをもちながらも、仕事の書類を提出したときに「できているよ」と言われると、「あーよかった」と。

声をかけてくれる人がいるから、自分の中でバランスがとれています。

もしも仕事をしていなかったら、誰からも声をかけてもらえない……。

たとえば、心折れているときに「なんでできないの」と言われたら、よけいに落ち込みますよね。だから「外に出たくない」という人の気持ちがよくわかるんです。外出ると怖いんです。
(続く)

小野寺朗さん
神奈川県大和市在住。1960年生まれ。郵便局員。50歳のときにレビー小体型認知症と診断される。

協力/田中香枝(SHIGETAハウスプロジェクト スタッフ)