認知症と診断されたあなたへ

4 アルツハイマー病に比べて進行がゆっくりな病気の話

繁田雅弘

  診断については、なんと言われたのですか? 
「アルツハイマー型認知症」と言われたのですね。

もの忘れが多くなってきて、家事の失敗も増えて。それ以外の症状があまりないようなら、たしかに「アルツハイマー型認知症」の可能性が高いかもしれません。

しかし、その診断の場合、従来は「アルツハイマー病」を想定していたのですが、最近は「アルツハイマー病」ではない可能性もかなりあることが分かってきました。

「アルツハイマー病」の特徴の一つは、脳に『アミロイド』という異常タンパクがたまって脳の神経に悪さをするわけですが、「アミロイドタンパクがたまらない認知症」があることが分かってきたのです。

その認知症の場合、「記憶の減退」は老化現象とは言えないくらい強いのですが、身のまわりのことはいつまでも自分でできます。進行が「アルツハイマー病」に比べてゆっくりなんです。

病名としては「嗜銀顆粒性認知症(しぎんかりゅうせいにんちしょう」や「神経原線維変化優位型認知症」などと呼ばれます

それが、病院の検査では分からないのです。亡くなったあとに脳を解剖しないと決められない診断なんです。ということは、医療機関で「アルツハイマー型認知症」と言われても、進行が目立つ認知症ではなく、あまり進行せず長く自分らしい生活が継続できる可能性もあるということなんですよ。

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。

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