認知症診療の第一人者である東京慈恵会医科大学教授 繁田雅弘医師が、認知症と診断されたあなたに伝えたい言葉。

18 認知症? 老化現象?

18 認知症? 老化現象?

「認知症は病気です」
たしかにそのとおりです。ただ、同じアルツハイマー型認知症といわれる疾患でも、あなたの年齢によって、あなたが体験している“認知症”というものはかなり違ってくるのではないかと考えているのです。

もしあなたが50歳や60歳なら、まさに病気としてとらえるべきでしょう。しかし、あなたが80歳や90歳なら話は違ってきます。つまり、あなたが後期高齢者なら、あなたの経験するもの忘れや、家事や頼まれごとの失敗は、病気によるものだけではないでしょう。それは年齢に伴う老化現象が大いに関係しているはずです。

どこまでの失敗が老化現象で、どこからの失敗が認知症かは判断できませんが、老化による失敗が少なくないことは間違いありません(神経質な人の中には、50歳代や60歳代から自分の年齢に伴う能力の減退を感じている人さえいます)。

あなたが高年齢なら、経験した失敗をすべて病気のせいにして、病気のためにたくさんのことができなくなったと考えるのは誤りです。
かりに認知症でなくても、若いころとは違う手際の悪さを経験しているはずです。若いころと同じつもりでやろうとすると、失敗することも多いでしょう。そして失敗は精神的に傷つきますし、強く記憶に残ります。また失敗するのではないかと、心配していると、次に同じ失敗をしたことが、さらに強く記憶に残ります。すると失敗が増えている感じがするのです。また失敗が増えた、さらに悪くなった、と感じてしまうのです。

認知症の人は、多くの場合、自分の能力を過小評価することで、さらに発揮できる能力が減ってきて、できることを減らしてしまうと思われます。    

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。


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