認知症と診断されたあなたへ

3 診断を聞いたときのこと

繁田雅弘

診断を聞いたときは、驚いたのではないですか? 
診断を聞く前に予想していましたか? 
覚悟のようなものがあったのでしょうか。
それでもやはりショックを受けたのではないかと心配しています。

診断を聞いた日の帰り道、いつもと景色が違って見えたという人もいました。

しばらくは診断のことを考えないようにして、朝起きて、食事をし、会社に行き、仕事をこなし、帰宅するという生活を、淡々とこなすことだけを考えようとしたという人もいました。

漠然とではあれ、「認知症になると何も考えられなくなる」と考える人は多いですね。少なくとも「診断されたときは、いろいろと考えることができても、いずれ何も考えられなくなる」と考える人は多い。だから精神的な衝撃が激しいものになる。

でも、「何も考えられなくなる人」なんているんですかね。

最近の私は外来診療が中心で、通院してくださる人とばかり会っていて、亡くなるところまでご一緒できていないのですが、何も分からなくなる人なんていないのではないでしょうか。

そもそも高度にまで進行する人の割合も以前に比べればずっと少なくなりましたが(軽度や中等度の段階で、ふつうに暮らしながら人生の最期を迎える人が増えました)、こちらに伝えたいことがあれば、全部ではないですがちゃんと伝わっている手ごたえを感じますね。

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。

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