認知症と診断されたあなたへ

11 誰に相談をしますか?

私は、東京のある団地で、時々、認知症講座をやらせてもらうのですが、そこには参加者がグループで話し合ってもらう時間があるんです。そして「自分が認知症かなと思ったら誰に相談しますか?」というお題で話し合ってもらったことがあります。
話し合いで挙がってくる名前の人は、その人にとって本心を打ち明けられる人であり、信頼できる人であり、秘密を守ってくれる人であり、頼れる人かなと思うんです。

いざというときには誰に相談しようか迷いますよね。しかも認知症の疑いが生じているということは、決断する力も鈍っているかもしれない。なかなか「えいっ」と決められないかもしれない。だから、あらかじめ考えておくといいと思うんです。そんな意味で、このテーマで話し合ってもらったんです。すると男性は「妻」と答える方がけっこういたんです。ところが女性は「夫」ではなく、「友人」や「親友」なんです(笑)。もしかしたら女性は一人暮らしが多いことと関係しているかもしれないのですが、相談相手を家族に限定せず、相談内容によって自由に選べるのがよいと感じました。

さて、あなたは誰に相談しますか? 

この時の相談は、人生の出来事の中でもとりわけ重要な相談になりそうです。あなたの心配する気持ちを汲んでくれて、本気になって心配してくれる人を選びたいですね。

家族とも縁が遠くなっていて友達もこれという人がいない場合、役所や役場の高齢福祉課とか介護保険課に相談するのもいいですよ。地域の民生委員の人にも一度会っておいて、自分が相談しやすい人かどうか見定めておくとよいと思います。行政の人や民生委員には心理的な距離を感じるかもしれませんが、これが相手の仕事と割り切って支援してもらうのも変なところに気を使わなくてよい、という人もけっこうおられます。

いずれにしても、そういう人の顔を思い浮かべられるようにしておくことが、認知症の場合はとっても大事なんですよ。

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。