認知症と診断されたあなたへ

13 自由に話せる人との出会い

以前はよく医療職や福祉職や支援者の人から、「何か困っていることはありませんか」と尋ねられたという方がいます。でも、特に困っていることはないという答えになってしまうことが多いので、最近は「何がしたいですか?」「何かしたいことはありませんか?」「お手伝いできることがありますか?」と尋ねる支援者が増えたそうです。

「何がしたいですか?」と尋ねられたら、あなたならは何と答えますか? 難しいですね、その時は。何を考えますか?

「この人、本気でいろいろとやってくれそうな人なのかな?」「どこまで本気なのかな?」って考えますか? 何かお願いして、途中で面倒になって、「この人、ウザいわ」なんて思われたら、かえってつらいですものね。

自分をよくわかっている人はいいですが、わかっていない人が助けてくれようとしたとき、認知症のない人と違って(助けてくれるのに)とても時間がかかったり、繰り返さなければならないときがあるので、それは自分をわかっていない人にとっては予想外だと思うんです。

それより、助けるとか、助けないとか、実現するとか、しないとか関係なく、自由に話せたらいいですね。空想とか夢を。しかもお互いに。「私はこれがしたい」「僕はこれがやりたい」と。その中で、もし共通するものが見つかって、お互いに都合がつくなら一緒にやったらいいですね。
「これがやりたい」と言うと、「いやあ、そりゃあ無理だよ」って言われてしまうこともあると思うんですが、そういう、世話をする人と世話をされる人の関係でなく、純粋に将来の想いや空想を話せる友人のような人と出会いたいですね。じゃないと、緊張して何も言えなくなってしまいますものね。

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。

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