認知症と診断されたあなたへ

25 10年経っても変わらないこと

あなたは、認知症になってずいぶん経ちますね。もう10年以上ではないですか。でも10年以上前に近い生活を続けられていますね。

病院での検査の成績は悪くなってきているとのことですが、家の中のことはだいたい結構続けられていますね。病気そのものの進行を遅らせることはできないけれど、継続してやっていることは続けられる可能性が高いと言われています。多少はご主人や娘さんから助けてもらうことが増えたのでしょうが、でも、家の中のことを頑張って続けているので、病気が進んでも続けられるんですね。

昔からのあなたを知っている人は、毎日が大変そうだけれど、今も昔もやりがいを感じて生きているように見えるって言ってました。羨ましいとも。あなたの毎日の本当のつらさを知らないから、そんなことが言えるのでしょうか。でも、あなたが今でも生き甲斐をもって生きていることは間違いないと私も思います。

ご主人も娘さんもあなたを支えてくださっているんですね。

もちろん認知症をもって生きていくことは言葉にできないほど本当に大変なこと。あなたは生まれ変わって次に人生を選べるなら、認知症にならないかもしれない別の人生を選ぶのかしら。けれど、今のようにたくさんの人たちと知り合って、つながりあった人生、今の素敵なご主人と夫婦になった人生、今の素敵な娘さんたちを生むことができた人生、その人生ではなく、別の人生を選ぶのかしら。 

繁田雅弘医師

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。