認知症をもつ人によく聞かれる質問に、認知症専門医が答えます。

相談をするなら かかりつけ医?認知症専門医?

相談をするなら かかりつけ医?認知症専門医?

内門大丈

この質問に一言で答えるのは難しいです。
それは、受診を希望している人の年齢、合併症の有無、臨床症状、病院やクリニックまでの交通の便などによって異なってくるからです。また、そもそものかかりつけ医や専門医の実力によって違ってくるのは言うまでもありません。しかし、こんなことを言っても身もふたもない話となってしまうので、私の考えをお伝えしようと思います。
大きく、5つのポイントがあります。

かかりつけ医に受診しても、専門医に受診しても、納得がいかなければ、次の医師にあたりましょう

認知症疾患へのアプローチがしっかりできる医師はまだまだ少ないのが現状です。さらに、認知症は一般的に経過の長い疾患です。医師との相性も大切になってきます。
一般的に、ドクターショッピングは悪いものと考えられていますが、こと認知症の場合は、診断が遅れてしまう場合があります。
また、医師を変更するときには、素直に話をして紹介状を書いてもらいましょう。紹介状を書くときに不機嫌になる医師は、かかりつけ医であっても、専門医であっても、今後関わらないほうがいいでしょう。

65歳未満の若年性認知症が疑われる方は専門医を受診しよう

若い方であれば、できるだけ早期に診断をつけることができたほうが、傷病手当金や障害年金などの社会資源を利用することもできます。
神経心理学的検査に加えて、脳の形態画像検査、機能画像検査をしっかりしたほうがいいでしょう。
自分の住んでいるところの近くに認知症疾患医療センターがあれば、これを利用するのも手です。有病率が低く稀な疾患になりますので、認知症のエキスパートにみてもらう必要があります。
現在、全国で若年性認知症支援コーディネーターが活躍しています。彼らに最初に相談するのもありだと思います。

もともと生活習慣病や心臓疾患、呼吸器疾患などを合併している高齢者でかかりつけ医がある方は、かかりつけ医に相談しよう

高齢になってくると、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に加えて、心房細動や慢性心不全などの心疾患や、COPDなどの呼吸器疾患が合併してきます。
夏場で急に認知機能が低下したようにみえる方の中には、ベースの身体機能の低下をもとに、脱水が加わったり、感染症が合併したりして認知症のようにみえる場合があります。
まずは、身体的状況をきちんと評価する必要があります。
また、かかりつけ医に対して、地域の医師会は、認知症の研修に力をいれています。よく勉強をされているかかりつけ医は、認知症に詳しくない精神科、神経内科、脳神経外科の医師より、よく理解していることがあります。
かかりつけ医の情報は、地域包括支援センターがよく把握している場合がありますので、ここに聞くのもよいと思います。
また、良いかかりつけ医は、専門医にもこころよく繋げてくれるでしょう。

身体の動きが悪いなどの運動機能障害を伴う方は、神経内科出身の専門医に相談しよう

運動機能障害の中には、大きくわけて、パーキンソニズムと小脳性の運動失調があります。
前者の中には、レビー小体体型認知症のほか、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などがあります。
後者には、多系統萎縮症などがあります。
認知症の専門医であれば、どの診療科出身の専門医であっても、これらの疾患については承知していますが、薬物療法の組み立てや、予後の見立てなどは、神経内科出身の専門医がいいでしょう。
今回は、詳しく述べませんが、特発性正常圧水頭症などの病態は、治る認知症と言われており、しっかりと診断する必要があります。

精神症状を伴い精神疾患との鑑別が必要な方は、精神科出身の専門医に相談しよう

最近では、内因性の精神疾患と考えられている方の中に、レビー小体病や嗜銀顆粒病などが含まれています。
その一方で、若い頃から統合失調症や双極性障害の方で、年を重ねた後に、認知症のように見えてしまう方がいます。この場合には、全身状態を勘案しながら、向精神薬などの薬物療法の工夫が必要な場合もあります。精神科出身の専門医がいいでしょう。


上記、5つのポイントをみてきました。いかがでしたでしょうか。今は、多くの情報が氾濫している時代です。是非、信頼できる人のつながりで正しい医療機関にアクセスしてください。

内門大丈
精神科医。湘南いなほクリニック院長。
横浜市立大学医学部臨床准教授。認知症の在宅医療推進や認知症情報の発信に積極的に取り組んでいる。


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