医学的に見た認知症の基本について、東京慈恵会医科大学教授 繁田雅弘医師が語ります。

認知症とは?(その1)

認知症とは?(その1)

2013年(日本版は2014年)世界的に使われている診断基準が変わりました

ここ10〜20年の間に、認知症の診断基準が変わってきました。

「MCI」(軽度認知障害)という言葉を知っていますか? 認知症の疑いがあるが、日常生活にこれといった支障のない状態のことを言います。検査結果から、アルツハイマー病とか、レビー小体病の可能性がありますが、病気ではない可能性もあります。体の病気や精神的な不調で、認知機能検査の成績が振るわなかったりすると、このように呼ばれますが、時間をおいて再検査した結果、異常なしになる人もいます。

「MCI」(軽度認知障害)は新しい用語であり、つまり「認知症の疑いがあるが、日常生活にこれといった支障のない状態」という診断もするようになってきたのです。


医療で今、認知症の診断基準として使われているのが、2013年アメリカ精神医学会で発表された認知症の診断基準「DSM-5」です。

認知症の診断基準(DSM-5)

A  1つ以上の認知機能の領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚・運動の連動、社会的認知)が以前のレベルから低下している。

B  認知機能の低下が日常生活に支障を与えている。

C  認知機能の低下はせん妄のときのみではない。

D  ほかの精神疾患(うつ病や統合失調症等)が否定できる。

参考資料「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」原著:American Psychiatric Association 日本語版用語監修:日本精神神経学会  監訳:高橋 三郎/大野 裕(医学書院)

上記の中で大事なのがAで、ここにきて変わったところになります。

以前は、たとえば「もの忘れ」だけでは「認知症」と診断されませんでした。もの忘れ以外に計算ができなくなっている、会話ができなくなっている、ものの位置関係がわからなくなっている……つまり、以前のレベルから複数の脳の働きが低下していて、日常生活に支障を与えている状態のときに「認知症」と診断されていました(資料1にあるCやDについても当てはまることが条件となります)。

今では、「もの忘れ」だけでも認知症という診断ができるようになってきました。
今までもっている障害によることが否定できて、それまでのその人の能力が下がってきているということが大事なポイントになりますが、もの忘れだけでも認知症と診断されるようになってきたのです。
(正確には、以前に比べて「もの忘れ」があり、「もの忘れ」が日常生活に支障を与えている、「もの忘れ」がせん妄のときのみでない、ほかの精神疾患が否定できる状態であるとき、認知症という診断をすることがあります)。

軽い段階で診断するようになってきました

認知症はアルツハイマー型認知症だけでなく、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症など70種類ほどあり、それぞれ、目立つ症状が変わってきます。

たとえば、前頭側頭型認知症の場合は、もの忘れは目立ちませんが、行動面での変化が目立ってきます。

つまり、「行動面の変化」だけでも認知症と診断されます。正確には、行動面の変化という一つの認知機能のレベルが以前よりも低下していて、「行動面の変化」が日常生活に支障を与えている、「行動の変化」がせん妄のときのみでない、ほかの精神疾患が否定できる状態であるとき、認知症という診断をすることがあるのです。

これにより、症状が軽い人が診断されるようになってきました。

「認知症と診断されても普通に生活できる人が増えてきた」という意味では決して悲観するものではないと思います。

認知症でも大多数の方が幸せに暮らしています。

(SHIGETAの学校「繁田雅弘とともに学ぶ認知症 基礎編」より。より詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください)

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授

東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。


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