14 自分にあったものを自分に合ったやり方で続ける

先日、藤田和子さんという認知症の本人である当事者の方と対談したんです。藤田さんは日本認知症本人ワーキンググループの共同代表です。

実は藤田さんの娘さんも藤田さんと同じ看護師で一緒に仕事をしたことがあるんですが、しっかりした芯のある方でした。強い女性でした。その娘さんを見て、こんなしっかりした人を育てた藤田さんも、きっとしっかりした人だろうって思ってたんです。

対談では、ご家族のお話もうかがいました。藤田さんのお母様は結婚しても仕事を続けたかったんですが、お父様が昔ながらの方で、仕事はさせてもらえなかったそうです。それもあって娘の藤田さんには、ちゃんと手に職をつけるようにと教育し、ちゃんと藤田さんは看護師になり、結婚したあとも仕事を続け、今では認知症をもつ当事者として活動もしています。お母様がかなえられなかった想いを、藤田さんはちゃんと実現したんだと思いました。そしてそれが、藤田さんの娘さんにもちゃんと受け継がれているように思えて、素敵だと思いました。
藤田さんも「うちは女系家族ですから」って笑ってました(ちなみに、藤田さんの「女系家族」っていう言葉には、3人の娘さんのほかに、メス犬のココちゃんと、メス猫のコハルちゃんのことも含んでいるんです 笑 )。

そんな藤田さんが教えてくれたのですが、たしかに認知症の症状はゆっくり進行するけど、方法を探して自分のやりたいことを続けることはできるんだそうです。日記などの一般によいと言われていることでも自分に合わなかった。要は自分に合ったものを選ぶこと、そしてやり方も人から言われた方法にこだわらず、自分に合ったやり方を探すことが大事だと言ってました。

よく、「認知症になってもできることはたくさんある。続けていることは、長く続けることができる」と言いますよね。でも大切なことは自分に合っているのか、自分に合ったやり方なのかということのようです。

無理をしてもいいことはありませんね。家族や友人の意見はあくまで意見として、あなたも自分にあったもの、自分に合ったやり方を探してくださいね。

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。

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