認知症と診断されてから通うことができる場所のひとつに「デイケア」があります。今回は、岡山ひだまりの里病院のデイケアで働く精神保健福祉士、加嶋夏代さんにお話をお聞きしました。
岡山ひだまりの里病院のデイケア内にある『きぼうのわ』には、認知症がある人たちが好きなこと、やりたいことを、みんなで楽しもうという日々があります。
認知症専門の病院のよる「デイケア」とは?
私が勤務するのは、岡山県にある認知症専門の「岡山ひだまりの里病院」が併する重度認知症患者デイケアです。デイケアは、医師や看護師、精神保健福祉士など認知症専門の職員がチームでケアする認知症のリハビリに特化した施設です。ただ最近は、デイケアやデイサービスもその活動内容はさまざまで、区分けがむずかしくなってきています。
医師の治療を受けながら、通うことができる
ただし、大きな違いもあります。私が所属するデイケアは精神科の病院が行っているものなので、通いの場で医師の診察を受けることができます。また、国で定められた基準のもと、認知症のある方々とのかかわりの経験が豊富な看護師や精神保健福祉士、介護福祉士、作業療法士などが配置されており、利用者のお世話に当たっています。ですから、精神的に不安定で、ほかのデイサービスを利用できない方でも、治療をしながら通うことができるのです。
利用料などには医療保険が適用される
気になる利用料についても違いがあります。介護保険のデイサービスは一割負担で、介護度によって上限が異なります。利用者はその条件の中で、通う回数などを組み、施設での食事代が別途かかります。
これに対してデイケアでは医療保険が適用されます。通いと食事代を含めた一日の料金が決められており、「自立支援医療制度」を利用することもできます。さらに介護保険と両方使うこともできるのです。
認知症初期の方も利用できる活動をスタート
ただし、重度認知症患者デイケアは、誰でも利用できるわけではありません。利用できるのは、医師が認知症の自立度で日常生活に支障をきたすと判断した重度の方に限られているのです。
でも、認知症初期の方でも不安や混乱などにより精神的に不安定になることがあります。そういった方たちのためにデイケア内で2019年に「きぼうのわ」というグループ活動をスタートしました。立ち上げには職員のほかに若年性認知症の方ともいっしょになって、グループ名や活動内容を決めたのです。
利用者同士の関わりを何より尊重している
認知症初期や若年性認知症の方にとっても、病院での治療と合わせながら、デイケアで安心できる環境づくりが大切です。しかし職員が率先して何もかも決めたりはしません。何よりも大切なのは、利用者同士の関わりだと思っています。やりたいことも利用者たちで話し合い、望む活動につなげること。「こうしたい」という方向が決まるまで、職員は忍耐あるのみなのです。最初はコロナ禍でマスクが不足していた時期だったのでマスクを作りました。
認知症初期の悩みをみんなで共有している
最近の活動は無農薬の野菜づくりです。どんな野菜を作るか決めて植え、草取りも利用者で行います。野菜を売って「おいしかった」と言われれば、それが利用者の元気の源に。本人たちの考えが形になっていくことが、自信につながっていくのだと思います。
自主性と並行して、本人たちのペースを尊重することも大切。そのなかで「これができない」という声があれば「みんなはどう?」と認知症初期の悩みを共有していくようにしています。
協力:岡山ひだまりの里病院 https://hidamari.hayashi-dorin.or.jp
インタビュー実施日:2022年10月15日
執筆:佐藤小百合
構成:早川景子