認知症と診断されたあなたへ

7 家族といても「孤独だった」

ある人は「孤独だった」と言っていました。家族から見捨てられたように感じたのだそうです。家族はそんなことは思ってなかったのですが、本人にはそう感じられたようです。

家族は一生懸命心配して、本人のためにできることはないか悩んでいたのだと思います。それが高じて、「服薬を忘れないか」口うるさく言ってしまったのだと思います。深夜にトイレに行っただけで「徘徊ではないか」と心配してしまったのだと思います。変わったものが食べたいというと「味覚が変わったのではないか」と心配してしまったのだと思います。最近は新型コロナウイルスの心配までしてしまう。

「明日は病院だっけ」と、そんな気がして尋ねたら、「さっきも訊いた」「何度訊くのか」「記憶障害が進行した」と嘆かれてしまう。孫に会って「嬉しかった」と話したら、「半年も前の話だ」と途中で聞いてくれなくなった。

家族が不安なんですよね。本人以上に。家族が不安に耐えられなくて、その不安を本人にぶつけてしまうんです。少しだけ家族の不安を分かってあげられます? 難しいかな?

あなたにしてみれば、最近の話でも昔の話でも何でもいいので、楽しくお話しできたらそれでよかったんですよね。昔と同じように、家族みんながおしゃべりしながら、ご飯を一緒に食べられたらいいのにと思っただけなんですよね。認知症になったことについては、ただ家族として一緒に悔しがったり、悲しがったりしてほしかったのですよね。

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。