6 自分の人生を、時間を生きる

よく「誰でも認知症になる可能性があるから……」って言いますよね。でも、ならない人もいるんですね。

「認知症にならなくてもほかの病気で苦労している人もいるから……」っていいますよね。でも、認知症にもほかの病気にもならない人がいるんです。認知症になったうえに、さらにほかの病気にもなる人もいます。

「認知症にならなくても、人間関係で苦労したり、仕事で苦労したり、家族のことで苦労している人もいるから……」っていいますけど、やっぱりそのような苦労をしない人もいる。病気になったうえにそのような苦労をする人もいる。

どうしても不公平なんです。病気になる・ならないで考えたら、公平ということにはならないです。残念だけど。そういうものなんだと思います。

でも、病気とか病気以外の苦労と関係なく、「自分がどんな毎日を送ろうか」「どんな暮らしをしようか」っていうことを、考える人と考えない人がいますね。考える人は、人生の意味がそのぶん重く大きいですし、価値があるというか、生きがいがあるということだと思います。そういう人を見ると、「認知症でも幸せになれる」とか「認知症でも大丈夫だ」なんていうことをあらためて言う必要を感じないんです。

認知症であっても、認知症でなくても、そういうことは関係なく、自分の人生を、自分の時間を生きているように見えるんです。つまり自分が認知症であるということを許せるだけでなく、それを越えているということなのではないかと思います。

繁田雅弘
東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属病院の精神神経科では初診や物忘れ外来(メモリークリニック)を担当。また、後進育成、地域医療への貢献にも積極的に取り組む。東京都認知症対策推進会議など都の認知症関連事業や、専門医やかかりつけ医の認知症診療の講習や研修なども行っている。日本認知症ケア学会理事長。